「自分がいなくなった世界で、残された妻を見守る一人の男の切なくも美しい物語」
この作品の主人公は、誰もが子供のころに一度は見たであろう“あの姿”の幽霊(ゴースト)。
不慮の事故で命を落とした夫が、死してなお愛する妻を見守り続ける姿を描いた作品です。
ありきたりなラブストーリーかと思いきや、妻とのコミュニケーションは一切なく、ただただ幽霊の視点に立った内容はあまりに衝撃的。
悠久の時を生きる幽霊が見る刹那、ほんの一瞬ほどの時間しか生きられない人間の人生とは――。
奥底に眠っている何かを目覚めさせられるような映画『ア・ゴースト・ストーリー』を紹介します。
『ア・ゴースト・ストーリー』あらすじと作品情報
ダラス郊外の小さな一軒家で仲睦まじく暮らしていたCとMだったが、妻のMはときどき不思議なことが起こる家を怖がり引っ越しを提案する。
その家をとても大切に思っていたCは、妻の思いに押される形でしぶしぶ準備をはじめるも、突然の交通事故で命を落としてしまう。
Cと最後の対面を果たしたMが悲しみのなか病室を後にすると、静まり返った病室で死んだはずのCがシーツを被ったまま突然起きあがり、Mがいる自宅へ向かって歩きはじめた。
幽霊になったCの存在は誰にも気づかれない。
Mを追って自宅へ戻ってくるも当然気づいてもらえないのだが、Cは憔悴したMをそばで見守り続ける。
次第に元気を取り戻したMが、幼いころの習慣だった「メモ」を隠して新たな一歩を踏み出したあと、ひとり残ったCはMとの思い出を求めて隠されたメモを探し始めた――。
原題 | A Ghost Story |
劇場公開日ほか | 2018年11月17日(2017年制作)/アメリカ/全編92分 |
配給元 | パルコ |
脚本/監督 | デヴィッド・ロウリー |
主演 | ケイシー・アフレック(夫「C」)ルーニー・マーラ(妻「M」) |
受賞歴ほか | 2017年 ユタ映画批評家協会 作品賞受賞2017年 ロンド・ハットン・クラシック・ホラー賞 インディペンデント作品賞ノミネート2017年 オンライン映画批評家協会賞 作品賞ノミネート2017年 ナショナル・ボード・オブ・レビュー トップ10・インディペンデント作品賞受賞2017年 ファンタジア国際映画祭 ケベック批評家協会賞受賞2017年 ドーヴィル・アメリカン映画祭 審査員賞・国際批評家賞・新人賞受賞 グランプリノミネート2017年 ボストン映画批評家協会賞 編集賞受賞2017年 ボストン・オンライン映画批評家協会賞 2017年年間トップ10受賞2017年 サンダンス映画祭 観客賞ノミネート2017年 シッチェス カタロニア国際映画祭 撮影賞・カルネー・ホベン賞受賞 |
「その場で創造する」独特な雰囲気が生み出したクリエイティブ精神の塊
この作品を撮りはじめた時点で、監督であるデヴィッド・ロウリーには最終的な仕上がりが見えていなかったそう。
一体どのような作品になるのか見当がつかないまま、以前『セインツ -約束の果て-』でコンビを組んだケイシー・アフレックとルーニー・マーラを招集し、秘密裏に撮影をはじめました。
撮影資金や場所などもすべて自分たちで確保しつつ、その場で創造することに重きをおいたことで出来上がった独特の世界観や質感。
監督いわく「実験作」だった『ア・ゴースト・ストーリー』は、彼らの飽くなきクリエイティブ精神により生み出され、映画界にたしかな一石を投じました。